天 衣 無 縫
作 住田春生
天少女 闇へ降臨
衣鉢 師から秘賾渡す
無智 惚れ曽根 世路成る
縫い物を手に夜更け行き
あまおとめやみへこうりん
えはつしからひさくわたす
むちほれそねせろなる
ぬいものをてによふけゆき
解説
真っ暗な空から天女が光と羽衣を身にまといふわりふわりと地上に舞い降りた。
老師が袈裟と鉢を授けて極めて奥深い真理(秘賾)と秘事を一子相伝の弟子に伝授した。
無知の知を自覚する考え方に心酔し悟った。河川氾濫の禍や人生の幸不幸もポジティブ
に考えて歩めば後に自然堤防の形成や全うな人生を成す事が出来る。 「転禍為福」
愛する人の衣服を手縫いしたり、ひと針ひと針に色を入れる刺繡を夜が深まるまでしている。
作品の上の文字を右から並べると天衣無縫になります。天人・天女の衣には縫い目の跡がない事から、
詩や文章などに技巧のあとが見えず自然であり美しい。物事が完全無欠で素晴らしい。
語句説明
天少女 = 天人・天女。吉祥天女・弁財天女など。羽衣と呼ばれる天衣で空を優雅に飛ぶ「羽衣伝説」
降 臨 = 天上に住むとされる神仏が地上に来臨すること。 例 →「天孫降臨」
衣 鉢 = 禅宗で法を伝える証拠として授ける袈裟と鉢。禅僧が師と仰ぐ僧から伝えられる奥義。
秘 賾 = 秘奥な事柄。きわめて奥深い真理。 幽玄で深奥なこと。深遠な真理。
無 智 = こざかしい智に走らないこと。無知の知 → 自らの無知を自覚することが真の認識に至る道であるとする、
ソクラテスの真理探究への基本になる考え方。謙虚で徳のある生き方。
惚れる = 人物や物事の魅力に心を奪われる。心酔する。 例 →「心意気に惚れる」
曽 根 = 河川の氾濫によって形成された自然堤防(微高地)で住宅地・畑・果樹園に利用される。(𡉻)
世 路 = 世の中を渡って行く道。世渡り。人生行路。
縫い物 = 衣服などを縫うこと。 裁縫 。「繍」とも書く刺繍 。「針仕事」
天衣無縫 = 天人・天女の衣には縫い目が全く無い事から人柄が飾り気が無く純真で無邪気(天真爛漫)である。
文章や詩歌がわざとらしく無く完成されている。物事が完全無欠である。
=評= 作者のお話によると過去に一度断念した題材だそうで。2021年7月初めに函館に旅行し、函館市縄文文化センターを訪問時に縄文遺跡群が世界遺産に登録されると知ったそうです。
その後7月27日に登録されたそうです。8年前にも三保松原を訪れた事があり、その後、世界遺産に登録された経緯があり再度、天衣無縫に取り組んだとのこと。
作品一覧に戻る
現代いろはうたのTOPページに行く