山 紫 水 明
作 住田春生
山背 晴れぬ 炉を渡そ
紫紺の海に 帆ふね冴え
水滴 露となり落ちる
明らむ雲 陽へ 目避け
やませはれぬろをわたそ
しこんのうみにほふねさえ
すいてきつゆとなりおちる
あからむくもひへめよけ
解説
冷たく湿った東よりの風が吹くと晴れ間が無くなり夏でも寒いから夏火鉢を渡そう。
紺碧の澄んだ海に大型船の白い帆が鮮やかにくっきりと冴えている。
水滴が結露して露になり葉先から落ちた。夏の終わりから晩秋にかけて儚く感じられる。
五十にして天命を知る(孔子)
日が昇りはじめ、空が明るくなりはじめる頃、突然、雲間から荘厳な日の光が眩しく視線を避けた。
作品の上の文字を右から並べると山紫水明になります。美しく清らかな自然の透き通った風景です。
語句説明
山背 = 主に東北地方、太平洋側で春から夏(6月〜8月)に吹く冷たく湿った東よりの風のこと。
最高気温が20℃程度を越えない日が続く。下層雲や霧のほか小雨や霧雨を伴う事が多い。
炉 = 夏炉 夏であっても北国や標高の高い地域などでは炉を焚くことがある。夏火鉢
紫紺の海 = 紺色がかった暗めの紫色の海。→ 黒みを帯びた紺色。「紺碧の海」「紺碧の空」
帆ふね = 帆に風を受けて推進力とする船。帆装の大型船はトールシップと呼ばれる。
露 = 水滴が結露して露になる。
露となり落ちる = 露と落ち露と消えにし我が身かな浪速のことも夢のまた夢:豊臣秀吉
明らむ = 日が昇りはじめ、空が明るくなりはじめること。
陽 = 日の光 ご来光 → 高山の頂上で見る荘厳な日の出。
山紫水明 = 美しく清らかな自然の風景。「太陽の光によって山が紫色に見え、川が美しく透き通って見える」
=評= 暫く温めていた作品が出来上がり、山紫水明を題材にして自然の摂理を少し取り入れたそうです。なかなか良い出来だと思います。現在、いろはうたは黎明期、芭蕉のように自然を詠んだ作品は落ち着いてほっとする。自然を詠んだ作品は流行に左右されない良さがある。つまり何年経っても陳腐化しない。皆さんもどんどん挑戦してほしいです。
作品一覧に戻る
現代いろはうたのTOPページに行く