沖縄人の誇りを持って
差別的扱い打破する力に 与那嶺 義雄
昨年12月に豊見城市議会は、国連などにおける「沖縄県民は
先住民族」とする見解に対し、その撤回を求める決議をした。
そこには、「先住民族」論を否定したいがために、県民が「立派
な日本人だ」とする過度な論調がみられる。この「決議」が、いっ
たいどのような琉球・沖縄への歴史認識と自己認識(アイデンティ
ティー)に基づくものか、また現下の辺野古新基地建設をめぐる
日米両国の植民地的蛮行に曝せる県民にとって、単に一議会の
問題では済まされない。
まず、国連で規定する「先住民族」の原語が自己決定権を有する
「人民」の意で使用されていることからすれば、かつて独立国であ
った琉球が日本の武力併合の結果として「先住民族」の立場に置
かれているとする歴史的事実を指摘したまでのこと。
むしろ国連で県民が、琉球・沖縄人が自己決定権を行使しうる「先
住民族」=「人民」と認知されるなら、この権利を行使することによ
って日米の植民地支配を終わらせる手段とすべきだ。
次に琉球と日本の関係、歴史認識の問題だ。琉球国の武力併合
とその後の植民地主義と同化政策、その結果としての悲惨な沖縄
戦、戦後の日本の独立と引き換えの米国への売り渡し・米軍支配
下での幾多の困難。そして、現在まで続く過重な米軍基地負担と
辺野古新基地建設にみられる沖縄への差別的・植民地主義的な
日本政府の姿勢。
いま大きな社会問題である「沖縄の貧困」も、このような歴史の積み
重ねの結果だ。はたして、私たちは議会決議にある祖国復帰後も
「他府県の国民と全く同じ日本人としての平和と幸福を享受し続けて
いる」と、いえるのだろうか。
さらに、決議は「先住民の権利を主張すると、全国から沖縄県民は
日本人ではないマイノリティーとみなされることになり、逆に差別を
呼びこむ」とするが、これは戦前期のヤマト本土における「朝鮮人、
琉球人お断り」の時代にウチナーンチュが自らの出自を隠して生き
た世界だ。沖縄が戦場になり、県民をスパイ視した沖縄戦を「命がけ
で日本人として守り抜いた先人の思いを決して忘れてはならない」と
するが、これらの意識に私は現在まで続く植民地主義・同化政策の
片りんをみる思いだ。
琉球・沖縄人としての自己認識の確立、誇りと尊厳こそ歴史の負の
連鎖を断ち切り、未来を切り開く力になるのではないか。
(西原町、西原町議、61歳)