琉球独立論討議資料
琉球新報 2016年11月18日 論壇
米大統領選と沖縄経済の未来 基地解決の好機にも 宮城弘岩
やはり経済の原点は「物づくり」だ。英国のEU離脱の是非を問う国民投票と、今回の米大統領選挙を見ると、どうもアングロサクソンの反撃、失地回復を意図している印象を受ける。
英国はかつて産業革命を起こし、七つの海を支配して植民地時代をつくった。また、米国はグローバリゼーションを中心とした世界経済をリードしたが、1980年代以降は実質経済成長や労働生産性の低下で、賃金格差と低迷する社会を生み出した。
今回の米大統領選挙は、かつての栄光を取り戻したい65歳以上の白人によるグローバリゼーションへの反発であり、物づくり経済を軽視し、金融ビジネスに走ったエリートたちがつくり出した格差への反逆ではないか。その格差は賃金、地域、年齢、産業など多岐にわたるが、最も影響を受けたのは地方の白人高齢者で、これは出口調査にも表れている。つまり、政治が経済をコントロールできなかったのである。
トランプ氏について、「政治経験がない」「軍人の経験がない」など多くの批判があるが、逆にいえば「これまで経済を知らない人々が政治をやってきた」ということだ。今回の結果は、トランプという経済人による真の経済回復を期待する民意の表れではないか。
経済とは、一部の人々がカネ儲けをすることではなく、「政治を通して民を済う」が本来の意味であり、ましてや、カネでカネ儲けすることではないはずだ。
かつて、世界経済をリードし、白人労働者が働いたデトロイト市やミシガン、ペンシルバニア、オハイオ各州などの苦境に立つ製造業を見るにつけ、ニューヨークに集中する強欲な資本主義、マネーゲーム、金融工学をつくり出した一部の金持ちへの反発ではないかと感じる。
さて、「米国第一」「偉大な米国」を唱えるトランプ政権が動き出すことによって、沖縄にどんな変化が出て来るか。TPP(環太平洋連携協定)は消滅して、自由市場政策の安倍晋三政権の「3本の矢」は頓挫する方向に進むだろう。米国は内向きに動き、物づくり経済強化に向かってドル安誘導を想像する。円高で日本の輸出は鈍化、観光客もこれまでとは違ってくるだろう。
もう一つは米軍問題。在日米軍駐留経費の負担増を叫ぶトランプ政権に安倍首相は色をなし、急きょ会談を設定した。首相がいう「揺るぎない同盟」が動揺する懸念が出てきたのだ。
これまで、日米地位協定交渉でらちが明かなかった沖縄にチャンスが来るかもしれない。同時に、共和党が上下院議会の過半数を制したことから、立法と行政をコントロールできる状況となった。米軍も意のままにする可能性があり、政権の今後を見極めたい。(那覇市、会社役員、76歳)
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