琉球独立論討議資料
琉球新報 2012年3月23日 宮里護佐丸
沖縄の「民族性」強く主張を 驚くべき日本政府の認識
私たち沖縄島に先祖代々住んでいる人間は「あなたは大和人(ヤマトンチュ)ですか?」と聞かれれば、その多くは「いや、沖縄人(ウチナーンチュ)だよ」と答えるであろうし、宮古島に住む人たちは「宮古人(ミャークピトゥ)」と答えるでしょう。それは自分が誰で、どこに所属する民族なのかをおのずと物語るものです。
国連では先祖代々琉球諸島に住む人々を琉球・沖縄民族と認識しています。そして、琉球・沖縄民族は133年間、日本政府からいわれのない構造的差別を受け続けている現実を、日本政府に改善するよう多くの勧告が出されています。
要約すると(1)琉球・沖縄民族の独自の民族性、歴史、文化、伝統、言語を認めること(2)民族としての琉球・沖縄民族に対する差別を監視し権利を推進し、琉球・沖縄民族と幅広い協議を行うこと(3)琉球・沖縄民族自らの言語を学習し使用する機会を十分に保障すること(4)軍事基地の異常な集中を解消すること─などで、民族性への理解と基地の過度な集中を是正しなさいとの内容です。
2001年と2010年に、前記のような勧告が出ているにもかかわらず、日本政府は私たちの置かれている現状を改善する努力をせず、現状は悪くなる一方です。
国連勧告を実行しない現状を打開しようと、去る2月14日、東京の参議院議員会館で、6人の国会議員が呼び掛け人となって、政府と琉球・沖縄民族で構成されたNGOの初の意見交換会が実現しました。しかしその席上でも、日本政府の態度は一貫して「琉球・沖縄民族は独自の民族性、歴史、文化、伝統、言語を持っていない」という驚くべきものでした。
日本政府が認めない理由として挙げているのが、「社会通念上、同じ日本国民であるから」との理由でした。日本政府の使う「社会通念上」とは、「多くの日本国民が琉球・沖縄諸島に住んでいる人たちを民族と認めていないから」との意見でした。
この理屈で考えると、日本の人口比で約1%しかいない私たちは、自分たちの意思で「大和人とはちがうウチナーンチュだ」と主張することは認められず、数の多い日本人が私たちが何ものであるかを決めることができると主張しているのです。
私たちは本気で考えなくてはいけません、私たち琉球・沖縄民族は日本政府と日本国民に対し、独自の文化・歴史・言語を持った民族であるとの一層の主張を行わなくては、私たち自身も先祖の歴史も言語もないものとされてしまいます。
(那覇市、琉球弧の先住民族会代表、45歳)
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