比嘉康文-東アジア共同体の誘致 将来像として研究調査を
「沖縄は本当に独立できるのですか」。「『沖縄独立』の系譜」(琉球新報社刊)を出版して以来、よく質問を受ける。また、「経済的に成り立てば、独立した方がよい」と話し掛けて来る人もいる。
「独立」という言葉はとても美しく魅力的である。しかし、世界の小国が独立への道を歩むとき、そこには殺戮・紛争が絶えない。それでは独立しない方がよい。それが一般的な考え方だろう。
しかし、沖縄の独立を平和的にできることを提唱し、その経済効果も示した世界的な学者がいる。ロンドン大学の森嶋通夫教授である。その著書「日本にできることは何か」と「日本の選択」(いずれも岩波書店刊)の中で、小国ベルギーにEUの本部があるように、かつて琉球王国だった沖縄を独立させて、東アジア共同体の本部を設置する。そうすれば「高給の共同体役人が数多く常駐するので、この地域の長期的繁栄が期待できる」と述べている。
森嶋教授は日本の論壇でも活躍した方で、英文学者の中野好夫氏が「朝日新聞の」論壇時評で高く評価され、その論文は「日本に対して示唆に富む」と定評があったことを覚えている。
ベルギーは明治初年、特命全権大使・岩倉具視らの報告書「米欧回覧実記」(現代語訳・慶応義塾出版会刊)でもその国づくりは高く評価され、「ベルギー人は憲法もその他の法律も、みな国民の自主的な力を涵養することを目的として定め、上下の人々が心を合わせて互いに懸命に努める民族性を創り出し、自主的な産業を育てようとした」と書かれている。小生には琉球王国時代からの流れと相通じるものがあると思うが、どうだろうか。
ベルギーのEU本部には二万五千人の職員が働いている。その給料はEU加盟国公務員の最高給料の二倍だ。現在、沖縄には四万人の米兵がいる。その兵士が一カ月に自由にできる給料は三万五千円程度と聞く。東アジア共同体はEUを手本にするだろうから、八、九十万円の高給をとる職員が二万人余も滞在することになる。米軍基地より経済効果があることは明らかだ。沖縄は地理的にアジアの中心地であり、本部があると人々の往来も頻繁になり、経済活動も活発になる。そして質の高い観光客が来ることは当然の流れだ。
「東アジア共同体」(谷口誠著、岩波新書)によれば、日本、中国、韓国の間で頻繁に国際シンポジウムなどが開かれている。小泉前首相が参加したアジア首脳会議でも共同体への道が示された。遠い夢物語ではなく、現実的に動いている。基地反対、振興策など目先の問題解決も必要だが、その一方で沖縄の近い将来像を政治家は提示すべきだ。
米軍基地を押し付け、それに反対する県民の怒りを振興策で抑える。振興策で投入される資金の80%以上が本土業者に環流し、いつまでも自立できない経済構造。その中で繰り返される県民の対立。そのむなしさをいつも感じている。県は早めに調査・研究してほしいものだ。
(宜野湾市、64歳)
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