琉球独立論資料
戦争と差別の時代危惧 秘密保護法案と消費税増税 比嘉康文
沖縄タイムス2013年10月12日 論壇
戦争と差別の時代がやってきた。本紙9月28日の特集記事「特定秘密保護法案」、2日の「消費税の8%決定」の増税記事を読み、そう思った。
特定秘密保護法案は防衛や外交の秘密を漏らした公務員らへの罰則の強化だ。それには情報の取得も対象になり、記者の取材も制限される。先進国で情報公開が遅れている日本で、秘密保護法だけが先行する。
敗戦処理で中立国を介して和平打診を試みるため作られた「和平交渉の要綱」は、外務省編集の『終戦史録』には記録がなく、伝記の『近衛文麿』下巻にだけ残っている。この要綱で沖縄は、日本の固有領土から切り棄てられている。それは尖閣問題でよく言われる「固有の領土」と関係してくる。そうした事を予測して削除し、国民に真実を知らさないのだ。それと似た事例は他にもある。同法案は国民の知る権利を奪い、将に軍国主義への回帰だ。
それはまた、外交力を発揮せず、中国や北朝鮮の脅威を煽り、集団的自衛権を持ち出していることでも分かる。
諸外国より情報公開が遅れているが、取り締まりだけが強化される。戦前の諜報取締りとどこが違うというのだ。
それに加えて消費税の8%値上げである。公約にもない消費税の10%値上げを掲げた民主党の野田首相、それに合意した自民党と公明党。この3党は国民に負担をかけることを何とも思っていないのか。国の借金が膨らんだから増税というのは納得がいかない。長い自民党政権と、それとの馴れ合い政治を進めてきた社会党(社民党の前身)によって膨らんだ国の借金。その後も国債は増え続けた。そのツケを国民に払わすのか。
元厚生省に入り、“お役所の掟”を告発しつづけて憤死した宮本政於氏は評論家の佐高信氏との対談で、「役所では本来の仕事をするより、財団をつくったほうが評価が上がる。財団づくりは自分たちの定年後の失業対策と考えていい」と述べている(『総検証「特殊法人」の真実』)。だが、そのムダな予算は国会で審議されない。
その一方で、日本の金融資本への課税は先進国で最も低い。金融資本への課税が欧米並みになれば、消費税の増税はいらないと言われている。かつて金融資本への課税を説いていた森永卓郎独協大学教授は、そのことを主張せず「超格差社会への第一歩」と論評しているだけだ。もう一度、金融資本への課税を論じてもらいたい。
そして「金持ちはより金持ちになり、貧乏人はより貧乏になる」仕組みの消費税を潰してもらいたい。 (宜野湾市、無職)
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