米追従に死の抗議 集団的自衛権反対の焼身自殺
本紙1日の社会面に載った安倍政権の集団的自衛権に反対して、東京の新宿で男性が焼身自殺を図り重傷だという1段見出しの記事に強い関心を抱いた。集団的自衛権の行使で、相手国からまっ先に攻撃を受けるのは米軍基地が集中する沖縄で、また戦争に巻き込まれるのかと心配である。
今度の事件で思い出したのは1967年11月11日、首相官邸前でベトナム戦争の即時中止と沖縄問題に対する弱腰の対米外交を続けた佐藤栄作首相に抗議して焼身自殺したエスペランチストの由比忠之進氏のことである。佐藤首相はわざわざベトナムに行きアメリカの北爆を世界で最初に支持し、国民から「平和憲法を持つ国の首相とは思われない」と批判された。
由比氏は同じエスペランチストで歴史家の比嘉春潮氏と親しく、沖縄の米軍基地とベトナム戦争について語り合っている。また、北ベトナムのエスペランチストと文通し、戦火の北ベトナムを知っていたという。
沖縄との関係で死の抗議を行なったもう一人の男性は広島の僧侶の小林ひでお氏である。恒久的な米軍基地の機能強化や維持を目指した新集成刑法に沖縄の人々が反対しているにもかかわらず、アメリカにものを言わなかった岸信介首相に対して、首相官邸前で抗議の割腹自殺をしている(1959年6月3日)。小林氏は当時、復帰運動にも協力的で“復帰男”の異名を持っていた古堅宗憲氏とも親しく、その遺書も託した。
由比と小林両氏のことは「埋もれた戦後史」を記録している比嘉康文氏の著作『わが身は炎となりて』(新星出版)に詳しく記述されており、二人の生き方を知ることができた。
男性が新宿で焼身自殺を図ったという記事を見た時、私は新たなショックを受けた。なぜなら、岸信介首相は安倍晋三首相の「おじいさん」で、佐藤栄作首相は「おじ」に当たる。そして、今度は安倍首相自身に向けられた国民からの死の抗議である。
安倍首相の親族による政権は、なぜ「国民から死の抗議」を受けなければならないのか。それは、単純に偶然で片づけられる問題だろうか。
いま考えると、3人ともアメリカ追従の印象が強い。今回、焼身自殺を図った男性は拡声器で「集団的自衛権反対」と叫んでいる。集団的自衛権についての報道によると、アメリカの戦争を助けるため、自衛隊を戦場に派遣し、最終的には国民を戦争に巻き込む構図が見えてくる。平和憲法の精神を無視して、どうして戦争だけで日本国民を守る事が出来ようか。