討議資料
沖縄タイムス 2011年2月21日 論壇

辺野古移設に根拠なし  鳩山氏が教えた抑止力の嘘  比嘉康文

 「ありがとう、鳩山由紀夫前首相」。13日の本紙1面トップ記事の「鳩山氏『抑止力は方便』」の記事を読み、とてもうれしくなった。首相時代に「最低でも県外」にこだわっていた鳩山氏が辺野古移設に方針を急転換したとき、なぜ辺野古移設になったのか。とても疑問に思っていたからだ。外務省出身の元首相補佐官で外交評論家の岡本行夫氏が頻繁に来県し、名護市内のヒンプンガジマルの近くの店などで誘致派と会っていることが分かった。その岡本氏が鳩山氏に何度も説明したことが報道されている。
 辺野古への基地移設に賛成した市民の中には「民間との共用」という稲嶺恵一前知事の言葉を信じた者がおり、必ずしも「抑止力」や安全保障を思って誘致派にまわったのではなかった。
 鳩山氏とは7年前の参議院議員選挙で話し合ったことがある。そのとき「ウソが言えない誠実な方」という印象を受けた。昨年5月に普天間第二小学校での宜野湾市民との対話集会で、県外移設の手紙を手渡そうとした女性が警備陣に押さえられたとき「手を放せ」と指示するなど、やさしい面も見せた。その鳩山氏が「抑止力」で辺野古移設を主張したときにはびっくりした。
 今回の鳩山氏のインタビュー記事については批判の声も多いが、小生はこれで辺野古移設はつぶれるものとみている。なぜか。移設の理由は「抑止力」というものの、軍事上からみた「抑止力」ではなく、単に移設の「方便」として使っているからだ。決して安全保障上の問題でもなく、北部経済の振興に結びつくものでもなかったことを明らかにしてくれた。
 また、鳩山氏の証言は小沢一郎氏絡みの政争とも深く関係しており、小生は鳩山氏の手の込んだ戦術とみている。そして鳩山氏は政権時代、協力すべき閣僚や官僚たちの妨害を受けて果たせなかった県外移設の夢を実現させてもらいたい。
 鳩山氏は現在、寛直人首相や北沢俊美防衛相、前原誠司外相らが主張する辺野古移設の根拠がないことも教えてくれたことになる。アメリカ側からは「辺野古や沖縄にこだわらない」こと、「海兵隊不要論」が言われているにもかかわらず、管政権は辺野古移設を主張し続けている。しかも「方便としての抑止力」で。
 昨年、県議会は基地がいかに経済発展を阻害しているかと明らかにした。県民は対立せず、海兵隊基地を撤廃させて自立経済に取り組みたい。そのチャンスとして鳩山氏の証言を生かしたいものだ。
(宜野湾市、69歳)



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