討議資料

沖縄タイムス 2016年11月30日

沖縄の自己決定権 自明 日米に基地建設の権利なし  内海 正三


 17日の論壇に琉球独立論違和感ありとの投書があった。国際社会での琉球の立ち位置を客観的に把握した上で、行く末については考察すべきである。
 2008年の国連自由権規約委員会最終見解では、日本政府に対して琉球・沖縄の人々を先住民として特別な権利があることを公式に認めるべきであるとした。10年の国連人種差別撤廃委員会最終見解では、沖縄における不均等な軍事基地の集中は現代的形態の差別であると指摘している。また、ユネスコにおいて琉球諸語は独自の言語で日本の方言ではないとしている。

 1879年の琉球処分が、当時の国際法違反の日本への併合であることは識者が何度も指摘している。その後の日本同化政策によって、非武の民が皇軍としてアジア侵略の先兵となり、ついには住民を巻き込んだ沖縄戦という地獄絵図に見舞われた。

 カイロ宣言とポツダム宣言によって日本は無条件降伏し、北海道、本州、四国、九州とその周辺の小島に主権を限定され、侵略により獲得した領土を放棄した。琉球列島は独立を取り戻す契機を得たが、東西冷戦のさなか、血を流して占領した在沖米軍基地の恒久化を図る米国は、国連への信託統治の提案準備というまやかしで軍事占領を継続した。

 第2次大戦後の世界的な民族独立の流れの中で、軍事植民地としての継続が困難になった米国は、「潜在主権」という侵略を正当化する理論で、日本からの提供により米軍基地を維持しているとの形式をとった。それが1972年の「本土復帰」である。宗主国がかつての植民地に対して「潜在主権が有る」と主張すれば、世界秩序はどうなるのか。アメリカやインドはイギリスの潜在主権下にあるのか。帝国主義的侵略を否定し、民族独立を進めたのが戦後秩序である。

 日本帰属に対してレファレンダム(主権者の意思表示の住民投票)も行われていない。沖縄返還協定は主体である琉球・沖縄を無視して日米政府間でなされた。ちなみに琉球における米軍基地の自由使用を認めたサンフランシスコ講和条約も琉球の主体抜きに日米政府のみでなされ、中国やロシア(当時のソ連)は認めていない。

 日本化という同化政策によって、琉球の文化的多様性は消滅しつつある。国際社会は差別の克服を同化ではなく独自性の尊重により行っている。ILO169号条約や「先住民族の権利宣言」である。

 琉球の住民の自己決定権は国際社会では自明の正義で、日米政府に耐用年数200年の軍事基地を辺野古に建設する権利はない。このままでは米軍の手先となって、日本軍としてわれわれの子孫が戦争をすることになる。
(那覇市、会社役員、67歳)


リンク 琉球独立論 違和感あり 沖縄タイムス 2016年11月17日


沖縄の自己決定権 自明

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