http://biz-journal.jp/2016/06/post_15586_2.html Business Journal > ジャーナリズム > 沖縄、米軍基地の全面撤去要求爆発! 2016.06.22 ジャーナリズム 沖縄、米軍基地の全面撤去要求が爆発! 国「県民集会の参加者少なく、インパクトなし」 取材・文=大清水友明 写真:6月19日に那覇市で開かれた県民大会 「ぐすーよー、まきてぇーないびらんどー(皆さん、負けてはいけませんよ)」 本土出身の筆者にはまったくわからない沖縄の言葉だったが、その怒気をはらんだ大きな声に 身震いがした。沖縄の生の怒りに触れたような思いがしたからだ。 早くも梅雨が明け、真夏となった6月19日の那覇市。午後2時から市内の奥武山公園陸上競技場 で、米軍属の男による暴行殺人事件に抗議する県民大会が開かれた。会場には日ざしを遮るものは ほとんどなく、炎天下のなか集まった人々は、帽子やタオルで暑さをしのぎながら、次々と登壇す る出席者の話を辛抱強く聞いていた。 1時間を過ぎたところで、ようやくこの日の大会の“真打ち”となる翁長雄志知事がマイクの前に 立つと、ひときわ大きな拍手があがる。 知事挨拶のポイントは、日米地位協定の抜本的な見直しと在沖海兵隊の撤退・削減を含む基地の整 理縮小の要求、そして普天間飛行場の名護市辺野古への移設の阻止。 「現在の日米地位協定のもとでは米国から『日本の独立は神話である』と言われているようなもの」 と安倍晋三首相にも伝えたと述べて、拍手や指笛を受けたかと思えば、最後は冒頭のように、 うちなーぐち(沖縄の方言)で強い怒りを示してみせるなど、 弁舌のうまさが際立つ。日本政府に対し、「県民の怒りが限界に達しつつあること、これ以上の基 地負担に県民の犠牲は許されないことを理解すべきだ」と険しい顔で迫ってみせたあたりは、もは や日本政府と利害を異にする琉球国王であるかのような振る舞いにすら感じさせた。 基地撤去の世論、新たなフェーズに 事件は4月28日晩、沖縄本島中部のうるま市でウォーキング中の20歳の女性が32歳の米軍属の男 に暴行され殺害された上に、北部の恩納村の雑木林に遺棄されたというもの。沖縄県警は5月19日、 この男を死体遺棄容疑で逮捕し、その後、殺人と強姦致死の容疑で再逮捕している。 これまでにもたびたび米軍関係者による事件に苦しめられてきた沖縄では、この事件を機に反基地 感情がぐっと高まった。 そして、5月26日には県議会が在沖米海兵隊の撤退を求める決議を全会一致で可決。さらに、地元 紙「琉球新報」が6月3日付朝刊一面で、沖縄からの全基地撤去を求める県民が42.9%に上ったとする 世論調査の結果を掲載した。この世論調査は、電話帳から無作為で抽出した5775世帯のうち501人か らしか回答を得られていないため、ややデータとして問題があるようにも思えるが、沖縄での反基地運 動が普天間飛行場の辺野古への移設に反対するものから、県内にある基地すべての撤去を求めるまでに なり、フェイズがこれまでとはまったく違うものになっていることは明らかだ。 先の県民大会でも、参加者が一斉に掲げた黄色いプラカードに書かれていたのは「米海兵隊は撤退を」 との文字。県民の怒りの激しさを感じずにいられない。 県民の反基地感情の高まり 県民大会をめぐっては、実行委員会の中心となった革新各党や労働団体などは、超党派での開催を目指 したが、参院選を前に基地問題がこれまで以上に政治問題化するのを避けたい自民党や公明党、さらには おおさか維新などが反発して不参加となった。 主催者発表では6万5000人が参加したとするが、県警では実際には3万人程度少なかったとみている。 実際に会場で取材した筆者も、6万5000人にはとても届いていないだろうとの印象を持った。 こうした情報をすでに得ている首相官邸幹部は、こう強弁する。 「思ったよりも参加人数も少なく、インパクトもなかったのではないか。2012年にオスプレイの配備に 反対して宜野湾市で開かれた抗議集会は10万人あまりと主催者が発表したが、今回はその数字におよば ない。参院選前に露骨に政治問題化しようとして自公の反発を買ったかたちで、革新各党側の戦術ミスに 助けられた」 一方で、地元紙の記者の見方は違う。 「気温が32度を超える猛暑となったこともあり、参加人数がやや少なくなったのかもしれませんが、動員 力の強い自民党支持の業界団体の力がなくともこれだけの人数が集まったというのは、県民の反基地感情 の高まりの証左です。参院選に向けて大きな弾みとなったのは間違いないでしょう」 参院選の沖縄県選挙区には、現職の大臣である自民党の島尻安伊子氏(51)が立候補するが、元宜野湾 市長で野党の統一候補である伊波洋一氏(64)を相手に、早くも苦戦が伝えられている。政府はあくまで も辺野古移設を推進するとの立場を堅持するが、参院選後にもその見直しを迫られる時期がくるのかもし れない。 (取材・文=大清水友明) |
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