未来築く自己決定権 戦後70年 差別を断つ
植民地支配、清算を 日本を告発し独立目指せ 辛 淑玉氏(人材育成コンサルタント)
−沖縄は今、在日韓国・朝鮮人のようにヘイトクライムの対象にされている。
「沖縄はいつも国家、つまり上からのレイシズム(人種差別主義)にたたかれてきた。加えて下からのレイシズムも出てきた。これは安倍政権が標的を示した、いわば保険付きの差別だ。弾圧と大衆のテロが重なっている。日本は危険水域を完全に越えた。沖縄は見せしめだ。だが沖縄はずっと闘い続け、ホップ、ステップまで来て、ジャンプしそうな勢いだ。日本の運動全体に『やればできるかも』という希望を見せている。沖縄が闘いの象徴となり、若者の学習の場にもなっている。辺野古は日本の歴史を変えられるか否かの引き金の位置にある」
−沖縄で自己決定権を主張する声が高まっている。
「沖縄の人々には、日本から離れることへの恐怖心がまだあると思うが、広く世界の情報を得て自信を持てば、一気に覚醒するだろう。今、その時期に入ったのではないか。『差別』だと言えるようになったのはすごく大きい。『一流の日本人になりたい』と思わされ、日本人として死んだり殺されたりしてきた経験は簡単には抜けないが、その葛藤を克服できれば、自分たちの土地がある沖縄は自己決定権で勝てるし、日本の犯罪性も告発できる」
−日本の犯罪性とは。
「差別の上に成立する植民地支配だ。この清算が大切だ。日本は差別や植民地支配を一度も反省したことがない。過去に何をしたのか真相を究明し、後世に伝えていくことこそが反省だが、一切やっていない。やられた側が訴えない限り、やった側は絶対に反省しない。沖縄自身が行った朝鮮人への差別、先島差別なども清算し、同時に日本を告発してほしい。『琉球処分』あたりまでさかのぼり、たとえ死んでいても植民地行政官らを一人一人告訴する。『仕方がなかった』で済ませてはいけない。ガマで自分の子どもを殺した親たちはずっと罪の意識を抱えて生きてきた。そんなことをさせた者たちを許してはいけない」
−沖縄への提言は。
「国際的な人権サミットを開くなど、憲法9条を最も具現化した島を目指す『沖縄宣言』をしてほしい。その意味で、沖縄は段階を踏んででも独立を目指すべぎだ。このままでは沖縄の歴史は本土の歴史にのみ込まれる。ウチナーンチュから見た歴史を教科書にし、まず教育を奪還すべきだ。沖縄に依存し、戦争の弾よけにし、米国のご機嫌取りにも使ってきた日本に独立を突き付ければ、日本も米国への従属関係から独立せざるを得なくなる。沖縄が独立すれば、日本はもはや米国に沖縄を献上できなくなる。
−沖縄の具体的課題は。
「闘うエネルギーが10あるなら、その8を国際社会への働き掛けに使う方が効果的だ。徹底的にロビー活動をして米国の世論や地方議会を味方に付ける。沖縄発のネットメディアを持ち、今の状況を絶えず可視化して窮状を世界に訴える。それを多言語で放送し、沖縄系移民を介して味方を増やすことだ」
(聞き手 編集委員・新垣毅)
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しん・すご 1959年、東京都生まれ。在日3世(韓国籍)。人材育成コンサルタント。
のりこえねっと(ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える国際ネットワーク)共同代表。
2003 年、第15回多田謡子反権力人権賞受賞。
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