沖縄タイムス 8月27日 論壇

「祖国」離脱機運強まる 新基地建設 岐路に立つ沖縄


                              比嘉 康文

日本は「祖国」になれるのか。「自己決定権」や「琉球独立」という言葉が日常的に
語られている沖縄の現状をみると、冒頭の疑問が浮かんでくる。

「祖国」による沖縄差別は復帰後も続き、それからの脱出を模索し始めている沖縄。
それを知ってか、知らずか、安倍政権は辺野古新基地建設を進めている。しかし、強
行すれば「祖国」からの離脱は強まるだろう。

そのことは最近、全国的なメディアでも指摘されている。写真週刊誌『フライデー』
(1月30日号)には「安倍政権の酷すぎる」ことが沖縄独立派を増やし、勢いづけて
いると指摘。そのことは識者たちの文章にも散見される。

沖縄人は自らの歴史に強い関心を持っている。薩摩の琉球支配から400年、明治政
府による琉球処分から130年の節目の2009年、各種団体ばかりでなく、自治体
でも講演会やシンポジウムを開き、日本との関係を問い直した。それは他府県には見
られない現象だ。

最近、若者たちが「沖縄人は少数民族だ」と国連機関に訴えてきたことが認められ、
日本政府に対して2度勧告されている。また、沖縄の歴史を国際的な視点から考える
動きも出てきた。その一つは明治政府による琉球処分の違法性の指摘である。

歴史を振り返ると、ふに落ちないことが多い。明治政府は1880(明治13)年、中
国で英国なみの権益を得るため宮古や八重山を中国へ割譲することを提案した。

つまり分島問題である。それは一度だけではなかった。尖閣諸島を含む先島を中国に
売り渡すもので、沖縄は物扱いされてきた。今度は、その歴史を無視して尖閣諸島海
域への中国公船の進出を脅威として煽り、辺野古新基地を押し付けている。

安倍首相は国会での安保法制審議でも中国脅威論を持ち出したが、その前に自らの外
交努力で、その危険性をそぎ落としてきただろうか。そのことは小生だけでなく、多
くの国民が疑問に思っていることだろう。

 小生は、復帰運動は米軍占領下の人権侵害から逃れ、平和憲法の恩恵を受けるため
だったと認識している。だが、その後の施策はあべこべだ。その結果、復帰を独立ま
での一時的な「緊急避難」と考えざるを得なくなった。

復帰後43年、そろそろ「緊急避難」の限界も見えてきたようだ。昨今の自己決定権、
琉球独立の風がそれを物語っている。

安倍政権は普天間を無条件撤去して「祖国」になることを選ぶか、どうかの岐路に立
たされている、と思っている。それは小生だけではなかろう。

(宜野湾市、73歳)


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