沖縄タイムス 論壇 2009年11月29日
薩摩支配の検証不十分 奄美含め損失調査必要 屋良朝助
今年も、もう残り一月。政権交代で沖縄の米軍基地も大きく変わることを期待していたが、本土の利益優先で、どうも沖縄の期待通りにはいきそうもない。沖縄の歴史はいつの時代でも本土の国益に左右され翻弄させられ続けている。
しかし、現在の苦境の原因をつくったのは400年前の薩摩の琉球王国への軍事侵略である。なぜなら、それ以来ずっと沖縄側にとっては400年間も、よその軍隊が駐留しているといえるからである。
さて、22日付本紙には「侵攻から親交へ 交流宣言書署名」という見出しで、仲井真弘多知事と鹿児島県の伊藤祐一郎知事が握手している写真が掲載されている。薩摩の奄美・琉球侵略から400年を迎えた節目の年に両県の交流を一層推進していくことを奄美大島の地で宣言した。しかし、地元で「奄美の歴史を隠ぺいする」ものとして、市民グループが交流宣言の中止を求めた。
これから親交を深め、交流を推進していくことは大事であるが、その前に歴史の検証がなされただろうか。私もその疑いを深くしている者の一人である。
鹿児島県と沖縄県の関係を考えるとき、薩摩、奄美、琉球この三者を主体として考えるべきであり、具体的に侵略による損失はどうであったかを調査し算出すべきだ。また、算出した損失をどうするのか、三者で交渉すべきだろう。1・薩摩の侵略以前に琉球側が奄美を支配したための奄美側の損失はどうであったか、2・薩摩の侵略支配による琉球側の損失はどうであったか、3・薩摩の侵略と直轄支配による奄美側の損失はどうであったか。−両県は調査チームをつくるべきだ。その中でも特に以前から私が提案している、持ち出された琉球王府の膨大な数の文化財の詳細と所在の調査が必要。それに伴って返還作業を行う。すでに個人に渡り直接の返還が難しいものは鹿児島県や政府に買い取らせ沖縄側に返還する。現在の法律で難しければ各県の政治家や国会議員に呼びかけ、「琉球文化財の返還法案」として立法すればよい、そのための政治家なのだから。
また、政治的に重要なのが、道州制において、奄美は琉球州に属するのか九州に属するのかということである。私としては、奄美は琉球州の中の奄美県あるいは自治区とすべきだと思う。しかし、この問題については奄美の住民を主体に沖縄県と鹿児島県も含め三者が議論する場を設けるべきであろう。
両県の真の友好のためにも400年の歴史を検証し、将来像を考えるべきである。 (那覇市、会社代表、57歳)