日刊ゲンダイ 2010年7月22日号

日本の「消費税」は欠陥制度に過ぎない  にっぽん改国  田中康夫

 「増税で経済成長」の愚論を真顔で唱えるメディアや評論家は、イギリスのジョージ・オズボーン財務大臣が、17.5%から20%へと税率を引き上げる、と6月22日に演説したのを引き合いに、日本も“増税バス”に乗り遅れるな、と声高に語ります。
 が、その前に、日本の「消費税」は、消費税と呼び得ぬ欠陥制度なのです。欧州と同様にインヴォイスを導入した上で、付加価値税としての消費税の在り方を議論すべきです。にも拘らず、その欠陥制度の再構築すら行わず、単なる税率論議に終始しています。
 仕入れ先に支払った税額等の明記で控除額を確認し、脱税や二重課税を防ぐ「インヴォイス」方式の導入こそ、中小企業に福音を齎すのです。先ずは、この公理を周知徹底すべきです。
 消費税の税率引き上げに伴い、「実際の取引で生じる最大の問題は、税を次の段階に転嫁出来ない事」だと畏兄・野口悠紀雄氏も看破します。「取引の中間段階における販売者が弱小零細業者」で、最終段階の「購入者が大企業」の場合、「購入者の方が圧倒的に強い為、販売価格を引き上げるのが困難」だからです。
 弱小零細業者が消費税分を負担する一方、「購入者である大企業は、消費税の納税に於いて、購入価格に消費税分が含まれているものとして納税額を計算」。「実際には購入価格に消費税分が含まれていないので、過大な控除を行う事になり、『益税』を得る結果」になります。皮肉にも、「税率引き上げによって、零細業者から大企業への大規模な所得移転が生じてしまうのです。
 消費税額を記載した書類を販売者が手渡し、それに基づいて初めて、購入者は前段階の税額を控除可能なインヴォイスを導入した欧州は、前近代的な税だと評されていた間接税を、現代的な税としての付加価値税へと変身させました。
 翻って、巨額の公的資金が投入された日本の大手銀行は現在に至るも1行を除いて法人税を1円も負担していません。地方で全法人300万社の3割に過ぎぬ黒字法人にのみ過重な法人税負担を強いる奇っ怪ニッポン。公正で簡潔な税制へと抜本改革する上で不可欠な納税者番号に留まらず、法人の「利益」から「支出」へと課税ベースと大転換する、法人税の外形標準化=キャッシュフロー税制の導入も、迷走する税率論議の前に必要なのです。(水曜掲載)




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