失われた琉球文化財の返還運動を 屋良朝助
今年は沖縄にとって重要な節目の年です。薩摩の琉球支配から四〇〇年、琉球処分から一三〇年となっています。貴紙は特集記事、連載記事で歴史を振り返っています。過去の歴史とはいえ新鮮な驚きをもって拝読し、沖縄の将来を考えるために必ず役立つものと感謝する者の一人です。
さて、私が県民に強く訴えたいことがあります。それは薩摩が琉球を侵略した時に奪われた文化財の返還運動をしてはどうかということです。
薩摩が侵略した時、琉球王府の中には、薩摩の兵隊数人がかりで点検に5日以上もかかるほど膨大な文化財、宝物があったと言われています。これらはすべて一方的に持ち出されました。王府の物というより奄美から与那国まで税を払った琉球の人々と職人や芸術家の汗の結晶です。なかには琉球以外からの購入品や中国などからの贈り物もあるでしょうが、これらの品々は琉球の誇りとなり未来への自信につながる重要な財産です。
何年たっても琉球の物は琉球の物です。県民多数で返還運動を起こしたいものです。個人の手に渡り返還が難しいものは日本政府に買取らせて返還させるという方法もあるでしょう。現在の法律で返還が難しければ、県議会や国会議員に呼びかけて立法すればよいのです。
工芸品の一つ琉球漆器は沖縄の歴史や自然の中ではぐくまれ、14世紀にはほぼ技術が確立し、なかでも螺鈿や沈金を施したものは世界最高レベルと言われ、堆錦技法も琉球独特の加飾法として考案されています。
失われた琉球の文化財は専門家の協力で時間をかけて調査し、全容を明らかにする必要があるでしょう。沖縄県はもちろん鹿児島県や日本政府、場合によっては国連の協力も必要になるかもしれません。県民多数と内外各方面の協力があれば必ず実現すると信じています。
一つ一つ根気よく返還を実現し、奄美、沖縄本島、宮古、八重山など各地で琉球の文化遺産として堂々と展示し、世界に誇れる多くの文化や芸術をみんなで後世に伝えていきたい。
私たち郷土の現在と未来を良くするには、苦渋のなかにも誇りある歴史を学び、若者が先祖を尊敬し、誇りと自信を持つことが大切ではないでしょうか。幸いにもスポーツの分野や芸能面、ロボット技術など次第に自信を持ちつつありますが、まだまだ充分とは言えないのではないでしょうか。
この節目の年に琉球文化財の返還運動がスタートできれば有意義なことで、それに期待しているのは私ばかりではないと思います。